◆ ベルギー カラーダイヤモンド買い付けレポート 2002年9月

どうでもいいと思う人も多いだろうけど、空港のネーミングは、特に国際空港の場合は結構重要なんじゃないかと思う。国の表玄関、外国人にその国を印象付ける第1歩なのだから。
ニューヨークはジョン・F・ケネディー、パリはシャルル・ド・ゴール、
それぞれの国民にとって国旗よりも馴染みのある名前がついている。
我が国の場合、千葉にあるのに新東京国際空港とはこれいかに、新大阪空港ではまるで新幹線の駅みたいやから関西空港なんてあまりにも寂しすぎやしないか。家康空港や秀吉空港とつけろとは言わないけれども、もう少しなんとかならなかったのか。
トラキチのウキ氏が言うのも変だが、成田の場合は長島茂雄空港でええやないかと思うのである、あの方あの辺の出身でしょ?出国ロビーに氏の現役時代の写真やら用具やらをいっぱい並べておけば、長島ファンの大部分を占める軽薄な団塊の世代がそれ目当てに空港を使用してくれるかもしれないし、飛行機の出発が遅れたときなど、れいの口調を真似て
1 『・・・いわゆるひとつのディレイと申しますか、ただ、そうシリアスなシチュエイションではございません、しばらくウエイティングしてもらえれば・・・』と訳のわからぬアナウンスをしておけば乗客もケムにまける。
関西はもちろんそれに対抗して栄光の永久欠番、背番号11、『村山実空港』、アカンか、
せやな、40年以上トラキチやってるウッキーのようなヤツじゃないと知らんからね。
いっそのこと古代まで遡り、卑弥呼空港とかヤマトタケル空港とでもつけてしまえ。
でも、発想に乏しいのは日本人ばかりではないようで・・・。

2002年9月17日、
ブラッセル(英語の発音、フランス語ではブリュッセル)ナショナル空港、
"明るいナショナル、みんなうちじゅうなんでもナショナル"、
某電器屋の私有空港みたいな名前だけど、言うまでもなくベルギーの首都、EUの中心に位置する大空港である。
半年ほど前に改修工事も済んで名実ともに大空港になったのはいいが、空港ビル内がやたら広くてどうしようもない。飛行機から出たらすぐさまジャージに着替えて準備運動を始めないといけないんじゃないかと思うくらい出口までの距離がある。エアラインのクルーから『こんな疲れる空港知らない』とお墨付きをもらってるほどなのだ。なにせ、飛行機から一歩踏み出し税関を出るまで、心斎橋の大丸から難波の高島屋くらいまでの距離をほぼ歩き通さないといけない(大阪以外の人すんまへん、地下鉄一駅分です)。
今回は珍しく満席ではなく、関西空港から快適な空の旅をしてきたはずのウキ氏であったが、アムステルダムから乗り継いでここにタッチダウンしたあたりでどうも腹具合がおかしくなり、ナショナル空港(やっぱり何か変だ)のトイレに篭もること十数分、2度3度と繰り返し襲ってくる"波"をこらえながらやっとの思いで荷物のターンテーブルに辿り来た時には人影もまばら、長い距離を歩いてくるうちに荷物はほぼ所定の位置まで来ているのだ、萎れた虎マークの付いたウキ氏のスーツケースは孤独に廻っていたのであった。
日本人ほどではないけれど、ヨーロッパ人にしては珍しく自虐的傾向のあるベルギー人であるが、この空港は自虐も自虐、これだけ広いと空港ビル内部で働いている人はたまらんやろね。そのうちに制服がTシャツとジョギングパンツになり、体育会系の人間しか採用されなくなるというウワサもあるくらいなのだ。 2

いまベルギーは気温20度を少し下回るくらいか、
ひところほどではないにしろ、いまだに週2、3度30度を越える日がある大阪から来てみると − 確かこんなこと去年も書いたな − なかなか体が順応してくれない、ひょっとしたら懐が寒いのと関係があるのか、腹が冷えてしまったようで・・。
さて、ウキ氏のone pointトラベルアドバイス、
我々のようなベテラントラベラーはいかに健康管理し、体調がすぐれない時はどのように対処するのか、これから海外旅行をする人のために少々述べておこう。

体調の悪い時、それはもう寝るしかないのである、なんやねん、それやったら大そうに言うなちゅうねん、そんな訳には行きませんよね、大切な時間と金を使って海外に来たのである、少々のことは我慢して出来るだけ楽しみたい、仕事をしないといけない。でも、正直なところ、風邪を引いて熱が出てしまったらどうしようもない。風邪は万病のモト、へたをすれば長期戦線離脱ということにもなりかねない。せいぜい抗生物質でも飲んでド根性で頑張るしかないだろう。しかし、どういうわけかー恐らく気が張っているのだろう、海外で風邪を引いてしまうというのは極めてレアケース、Fancy Vivid Blueにお目にかかるほどではないにしろ、歴戦のツワモノ、ではなかった南船場の軟弱業界人ウキ氏でさえも風邪のおかげでホテルで寝込んだという経験は一度もない。
それよりも怖いのはやはり今回のように胃腸の具合が悪くなることだ。日本から持ち越してきたような少々の風邪ならスポ根モノの感動シーンを思い出すまでもなくある程度は耐えられるのだけども、胃腸がKOされてしまえば、矢吹丈や星飛雄馬(相変わらず古いなあ)でも寝込むしかないのである(やつ等が腹痛になるなんて想像も出来なかったけども)。我々凡人はまず気を付ける、これからやらないとね。 3
最も心してかからねばならないのが機内食。
機内で出される全ての食品を腹に収めてしまうのは全くもってよくない。欧州行きは約11時間のロングフライト、2回の食事プラス軽食が出る。飛び立ってすぐの食事はいいだろ
う、旅の準備で満足な朝食を摂ってこなかった人も多いに違いない、多分ほとんどの人は美味しくとまではいかないまでも無理せずに平らげてしまうはずだ。機内の照明が消されて何時間か経った頃スナックが出て来る。KLMの場合はカップヌードルかアイスクリームだ。見ていると8割くらいの人があのニオイに惹かれて暗いところでズルズルとやっているが、これが腹痛の原因となる、絶対に避けるべし。防腐剤、発ガン性物質の塊、ネズミも食べないと言われるカップヌードルは白人たちに食べさせておけばよいのである。
このあたりで腹痛になった人はまだラッキーだ、フライトはあと数時間残っている、

この間にゆっくりと休めばすぐに回復する。問題はこれからだ。到着の2時間くらい前になるとまた食事が出て来る、これには要注意である。カップヌードルで腹痛にならなかった人でも胃腸にはかなり負担をかけている、それにほとんどの人はこの時まで眠っていたかそれに近い状態である、さあ食事と言われ目は醒めても胃腸はすぐさまお目覚めとはいかない、何となく惰性で口を動かして食道に流し込んでしまった人はこの後1,2時間後に間違いなく消化不良、胃痛となる。ウキ氏の経験から言うとこの胃痛が一番つらい。どんな薬を飲もうとも24時間以上しっかりと胃腸を休ませないと完治はしない。

食欲のない時、睡眠から目覚めた直後の機内食はキャンセルすべしなのである。
サラリーマン時代には随分と好き放題やったウキ氏、機内サービスが世界的に評価の高いシンガポール航空やキャセイ航空のファーストクラス(Firstです、ええ響きやねえ)にも乗ったことがあるがそのような機内食よりも場末のレストランの食事のほうがよほど健康的で美味である。目的地のホテルに着いたらすぐさまガイドブックに印を付けたレストランに直行できるようお腹を健康にそして空腹感を感じられるようにしておこう。
* 機内食は勇気を持って断ろう!

4 困った弱った胃腸を短期で回復させる手立てはあるのか。
日本人はやたら正露丸と言うけれども、あんな毒の塊を飲むのは愚の骨頂、瞬間麻酔効果で痛みは治まるかも知れないが帰国するまで完治はしまい。古い人の知恵に学ぼう。
何と言っても梅干が効く、効くだけでなくて予防効果も満点だ。この前ゴジラ松井も言うてたね、毎朝梅干は欠かさないようにしてるって。本場和歌山の紀州梅、これをお薦めする。どうも排他的なところがあって和歌山は好きになれないウッキーであるが、紀州の梅干は最高だと思う。スーパーで買っても小さなパックが500円くらいするが、つまらぬ胃腸薬に銭を使うことを考えれば安い物である、何よりも合成着色料で真っ赤になってないのがよい。やはりfancy colorはナチュラルに限るのである、treatはアキマへん。ウキ氏は海外に来ると必ず一日5個くらいは梅干を口に入れる。これが元気の源なのだ。
蛇足ながら、
機内食が口に合わないと言って弁当持参で国際線に乗り込む人が時々いるけども、これはマナー違反、レストランに食べ物持って入るに近いものがある。合わせて肝に銘じておいてほしい。
でも、本音を言えば、ええかげんあのクソまずい機内食はやめて、新幹線の車内のように弁当やおにぎりを販売すればいいのにと思うのであるが、如何でしょうか。航空会社もコストダウンが図れるし、いいことずくめだという気がするが。こんな単純なこと誰も言い出さないのはいったいどうしてなのかと不思議でしょうがない。
このように感じているのはウキ氏だけなのだろうか。

それはそうと、2ヶ月ぶりのアントワープ、何を見て何を買ったのか?
状況は今年になってあまり変化はない、ピンクのダイヤの0.1crtサイズから上のモノがますます買いにくくなってきている。しかたなしにそれよりも小粒で色の良いところを探すことになる。最近では0.01crtの物から一生懸命見ている。ピンセットで一つ一つ摘みルーペを通す、5個や10個の買付けではないから気の遠くなりそうな作業だ。時には、はじいて飛ばしてしまい大騒ぎだ、なにせ小さい物では直径1mmほどである、カーペットの毛の間に入り込むこともあり捜索は時に困難を極める。大抵なんとか見つけ出すけれども年に一度くらいは見つからず終いになる。一粒ン万ン十万のものなら当然見つかるまで捜すが、安物は適当なところであきらめる。無くしてしまうのはせいぜい高くとも一粒千円くらいの物である。
買い付けの現場以外でもダイヤの行方不明というのは案外多いもので、誰しも最低2、3度は経験している。ウキ氏が経験した一番ヒヤリとした"事件"はもうかなり前、結婚したての頃だった。何を考えていたのかカッターシャツのポケットにけっこう高額なルースダイヤの包みを入れたまま帰宅してそれをそのままシャツと一緒に洗濯機に放り込んでしまったのだ。翌日の昼前、事務所でやっとそれに気が付き、祈るような気持ちで家内に電話した。このような場合、えてして働き者の妻がアダとなるのだが、ウキ氏の家人は極妻、これが幸いした。洗濯物は昨夜のまんま、胸のポケットからは我が家に全く相応しくないモノが出てきたのであった。こんな話をベルギーでしていたら、ある事務所の経営者から似たような経験を聞いた。こいつは原石から研磨して販売しているオッサンなんでウキ氏の話とはスケールが違う。ある日彼はウキ氏と同じようにうっかりと自宅までダイヤを持ち帰ってしまった − 大粒の原石100個ほど入った包み。早く金庫に入れとかないと、と考えながらテーブルに置いたまま奥さんと少し会話した(多分抱き合ってキスでもしてたのだろう)、フッとテーブルの上を見ると包みが消えている、えらいこっちゃ、抹茶に紅茶、どうでもええけど、いやいやよくないよくない、もし無くしたら金額のケタが違う、数十万や数百万ではきかない、真っ青になりながら家中捜したが神隠しにあったように出てこない。傍らでは3歳になる息子が無邪気に遊んでいる、ええなあこいつは全く悩み事がなくて、っと、その玩具を見たとたん全ての謎が解け大爆笑、なんと、おもちゃのダンプの荷台に100個あまりの原石が積み込まれていたのであったそうな。さすがユダヤ人の子供は遊び方が違うねえ、こんなふうにダイヤと慣れ親しむわけや・・。
また横道にそれてしもた。
・・・

最近、ライム系のダイヤが流行っているのをご存知かな?
ライム系というとどんな色かと思うがイエローグリーンかグリーンイエローか知らんけども、そのような系統の蛍光ペンで塗ったようなカラーダイヤである。大手の鑑定屋で必ずしもナチュラルと判定されるわけではないのであるが、トリートと決め付けられもしないのである。結局判定不能というジャッジが下されることの多いその種の物であるが、どこかのアイデアマンがそれに"アップルグリーン"?だったかな、そんなような名前を付けて売り出し、いま静かなブームになりつつあるそうな。せやね、売れないと言うて手を拱いていてはどんどん業績も落ち込んでしまうばかり、柔軟に頭を使わないと。
Green系と言えば、5月の買い付けの時にL氏の事務所でとてつもないホンマもんのGreenダイヤを見せてもらい、『もう2度とこんな素晴らしい物にお目にかかることは・・・』というようなことを書いたが、実は前回7月にも強烈なモノを見せてもらったのだ。 5
1カラットのFancy Bluish Green、もちろんGIA付である。5月に見たFancy Deep Greenよりも美しかった。どんな色かというと、信号の青。信号というのはみんな青黄赤と呼んでるけども、実際あれは青ではなくて緑色やないかいなと感じる。薄暮状態で見た青信号の色、まさにあれだった。カラーストーンのように透けてなくて、また、ベタっとした感じも無い、それでいて色のりばっちりでダイヤらしい光沢がある、こういうのを名実ともに"完璧"と言うのやろね。L氏はこれを$1,000,000とか言うてましたな。5月には『ええなあ』と思っただけだったけども、7月にこれを見た時にはL氏に殺意を覚えたウキ氏であった。L氏を殺害し2つのGreenダイヤを奪う、そしてSを犯人に仕立て上げ高笑いしながら帰国する、そんなようなミステリーを書いてみようか、うまく書けたら早々に実行に移そう。

ウキ氏が買付けに出発した同日、小泉首相が北朝鮮を訪問。
このニュースは流石にヨーロッパの英字新聞でも一面トップだった − インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙(有名なニューヨークタイムスとワシントンポストの共同制作による欧州の英字紙である)、残念ながら受験勉強をやってた当時から早や4半世紀も過ぎているため辞書がないと内容の半分も理解できないのであるが、写真を見る限りでは首相の臆せぬ堂々たる態度が見てとれ好感が持てた。あんな国と国交なんて・・・っと、ウッキーも多数の日本人と同じような感情を持ってはいるが、北朝鮮との外交を対中、対韓のカードとして使用するくらいの意識を持たないといけないのではないかな。欧米の常識は『戦争とは外交の一つの形態』なのである、それを裏返せば、外交は武器を懐に忍ばせての戦争なんだということである。良いか悪いかは別にして、それが世界の現実なのだからしかたがない。外務省の大バカヤローたちがそれを理解するのにはあと500年くらいかかるだろうけども。
ところで、まったくもって残念なことにヨーロッパの人たちは日本と北朝鮮が一体何のために首脳会談をやっているのかよく理解していないようだ。Sでさえも、"拉致"とか"北の工作員"、"スパイ船"等には知識がないのである。その上に、戦前の朝鮮半島情勢に関してやたら日本のマイナスイメージだけは持っている、韓国や北朝鮮に負の遺産のみを残して敗戦したように考えているのである。インフラを整備し、教育と医療の設備やシステムを残してきたというような事実は全く知らないのだ。
・ ・・またまたウッキー怒りの遠吠え!!
『そんなイメージを植え付けたのは誰だ!!!』
そんなわけで、首相の訪朝は別の意味でショックであったウキ氏である。

帰国便はフランクフルト経由のルフトハンザ、お土産はもちろんソーセージなのだ。
帰宅して塩タンなんかといっしょに焼いて食べたらさぞ旨いだろうと今から涎がこぼれそうじゃ。でも、聞くところによると、食品類は空港の検疫所を通らないと入れられないとか、まあええやろ、ドイツが作ったものや、間違いはあるまい、ということにしておこう。

次回の出張は多分師走の声が聞こえる頃かと思う、この気候からはなんとなく大分先のように思えるけども。
では皆様、Good Luck!




◆ Back Number ◆
2005.07 Cut & Polished in Belgium
2005.04 ルフトハンザで出国
2005.02 オリーブの漬物
2004.11 ベルギーの初冬
2004.9 上手なブラフの使い方?
2004.8 2004アジアカップ
2004.4 ゴールデンウィーク に オランダ を想う・・・。
2003.11 Believe me!
2003.7 Vacances!
2003.5 日本とベルギーの規範
2003.3 ベルギー名物と言えば
2002.9 空港のネーミングについて
2002.5 ワールドカップ
2002.3 ひな祭り
2002.2 ユーロとトラブル
2001.12 プリンセス雑感
2001.11 ニューヨークの思い出
2001.9 不景気とは
2001.7 女子テニスプレーヤーというのは宝石だらけで戦っている・・・。
2000.4 ファンシーカットの好みは各国でかなり違うようだ・・・。
2000.2 天然の物が相手になるがゆえのつらさ、というのが常にある。
1999.12 私はダイアモンド業界ではゴルフの世界の尾崎みたいなものだ、といって自己紹介することにしている・・・