◆ ベルギー カラーダイヤモンド買い付けレポート 2002年3月

2002年3月3日関西空港、
出国時の空港の雰囲気は好きだ。
笑顔と程よい緊張感に満ちている。
特に今は学生諸君の卒業旅行シーズン真っ只中、女子学生が圧倒的に多いように思うが
彼女たちのうれしそうな表情と笑い声、歓声がチェックインカウンターから16番搭乗口まで途切れることなく続いている。
春ですねえ、いいねえ、私ことウッキーもたまにはあんな顔して飛行機に乗ってみたい。

今日はひな祭り、
笑顔の女子大生たちにちなみ、朝刊のコラムにその由来が書かれていたのを紹介しよう。
当然平安時代まで遡るだろうと思っていたら徳川二代秀忠の時というから400年足らずである。秀忠の娘、後水尾天皇に嫁いだ和子中宮が6歳の娘のために座り雛の押し絵を作ったのが始まりと言われている。カップルのモデルは在原業平と小野小町らしい。
小野小町はまあ当然だろうけど、業平さんとはね、この人ただの歌人でしょ、
と思って調べてみたら何となんと、平安時代を代表するスーパースターなのであった。
何の?蹴鞠の?流鏑馬の?
いやとにかく男前で、もてるの何の、
彼がひとたび都大路をゆけば、
『ほんま、業平はんは雅やかなお人どすなあ』
『いや、どないしょう、在原はんと目合うた』
とか言うてたんかどうか知らんけど、京女を相当ドキドキさせていたらしい。
それはもう大変だったらしく、ひな祭りの後すぐやって来るホワイトデーの夜ともなると
在原助平氏、いや失礼、業平氏は大忙し、何軒もの女性宅をはしごしていた、

なんていう話もまことしやかに伝わっておる・・・なんか矛盾だらけの話やねえ。

つまらんことを書いてるうちにKL機は淀川沿いを北上している。
通常機内では、時々立ち上がって屈伸運動とかイチローの真似とか出来るように通路側に席を取っているウキ氏であるが、今日はどういうわけか窓側。
エコノミーの乗客がOverbooking,KLM優良旅行者のウッキーはグレード
アップのビジネスクラスとなったのである。おかげで眼下の風景を堪能。
ちょっと西にアっ甲子園や、と思っていたらほどなく琵琶湖とその北の雪をかぶった山々が見えてきた。針路をやや北東にとり岐阜から長野に入る。日本アルプスの景観はどうだ、
もう目にしみる美しさである。神々しいとはこのことかと思う。
そして、能登半島の大きさにビックリ、
大阪―東京間を飛んで、知多半島が"地図と一緒や"と思った人も多いと思うが、
能登半島は地図の印象とはまるで違う。思っていたイメージよりも大きいし、
まるでティラノサウルスの頭部のようだ。
日本海の荒海に面した漁村を最後の風景にして一路ロシア上空へ。

何事もなくAntwerp着、
日本の3月同様、西ヨーロッパも春の気配を十分に見せてくれている。
前回来た時と日照時間がまるで違う。11月から2月の初旬、朝は8時半くらいまで暗い。
そんな暗いうちから学校へ向かわねばならぬ小学生はなんだかとてもかわいそうである。
日本と同じように上級生がちびちゃんたちを引き連れての集団登校であるが、親はさぞ心配だろうなと思いつつ見ている。
ところが3月になると、朝はほぼ日本なみ(大阪なみ、東京はもっと早いだろう)、夕方は7時くらいまで明るい。
空の色もFancy Blueに変わっているかのようだ。

月曜の朝いつものようにSの事務所に出勤、
途中Sのところによくやってくる韓国系ベルギー人の若い男とバッタリ、
おもわず『まいど』と言ってしまい、ここは南船場ではなかったと自ら苦笑。
向こうも心得たもので、同じように日本式の挨拶で返してくれた。


デフレと円安のダブルパンチで我々輸入屋はもう爪に灯をともしながら生活しているようなものである。これでも海外で買えるものが多くの中から選べるという情況であれば別に円安やデフレなど大した問題ではない。しかしながら、慢性的品不足はもう当たり前のこととなっているのである。ウキ氏はカラーダイヤ専門のバイヤーとして毎回ピンクのダイヤを多く買い付けきた。2、3年前はウッキーの独壇場、結構儲けさせてもらったけれど
Pinkdiaのほぼ90%を供給しているオーストラリアArgyle鉱山の産出大幅減、そしてそれに反比例するかのように多数の日本人バイヤーのカラーダイヤ市場参戦で品不足は甚だしい。0.2crt以上のきれいで割安感のあるものはほぼ皆無である。

ブライダルに使われるような0.3〜0.5crtのDEF、VVS,Excellent という
ようなところは逆に供給過剰で値下がり傾向が続いているのとは全く対照的なのだ。
Argyleもただ手をこまねいているわけではない。新しい鉱脈を見つけようと躍起になっているらしいが希望的観測はだんだんと少なくなっている。
Argyleより先、30年以上前にカラーダイヤ専門を掲げたアントワープの名物男、
L氏は言う、『2006年にはPinkdiaは枯渇するだろう・・・』
これまで儲けたおして相当なリッチマンになっている彼は高品質のカラーダイヤを多数保有しているはずである。2006年の到来を待ち望んでいるのは彼くらいのものであろうが、L氏の自分自身のためだけの楽観的見解が間違いであることを祈るウキ氏である。

今回ひょんなことから多数の原石を見る機会に恵まれた。
原石というのは時々混同されているけれども所謂Loose Diamondではない。
英語で言うとRough Diamondという、Cut&Polishされる前のダイヤをいうのである。高品質の物は50から100個単位で白い紙に包まれているが、低級品はクリップのケースのような物にガサッと入れられている。こんなところ見たら消費者はダイヤ買うのいやになるやろな、世の中の常であるが、きれいな物の舞台裏は結構汚れていたり雑然としていたり、無味乾燥であったりするのである。
Roughのほとんどのものは歪(いびつ)な形の石ころか溶け始めた角砂糖、あるいはガラスの破片のような感じか。4角錐を2つ重ねたような8面体が理想的なモデルで、これをアントワープのやつらは"クリスタル"と呼んでいる。なかなかこれが少ないようだ。100個の中に3、4個しかない。
流石のウッキーもRoughは初心者である、でもそこはキャリア17年のバイヤー、見ているうちにだんだんと判って来た。でもこれに値段を付けるのはかなり勇気がいるのではという気がする。
業界の言葉でWindowを開ける、というそうだが(マイクロソフトとは何の関係もない、念のため)当然表面はすりガラス状で内部のキズの具合がよくわらない、それを多少チェック出来るようにどこか1箇所少し磨いてみるそうだ。でも相当ハイリスクハイリターンの世界らしく、一度これにはまってしまうと2度と通常のLooseの世界には戻れないらしい。1,000個も見たかな、面白くなってきて何となくその意味が理解できた。銭がしこたまあったらぜひやってみたい。



3月6日、啓蟄、
冬眠していた小生物たちが土の中から出てくる、と言われている。
ベルギーにいるとそのような日本の暦は全くピンと来ないのであるが、日本で今もぞもぞ出てきているのは、ムネオヘビやカトウガマガエルなど妖怪の類ばかり、
なにはともあれ、長く冬眠しているであろう多数の福沢諭吉先生、早く市場に出て来ておくれ、というのが塩ジイのみならず我々商売人全ての願いである。世の中問題は不良債権構造改革ばかりのような報道が目につくが、ウキ氏はムードの悪さによる購買意欲減退が一番の問題と見る。
何度もしつこく述べるがその悪しきムードを作っているのがマスコミでありエコノミストたちだ。いわゆる評論家といわれる人種ほど救いがたい存在はない。自分では何もしない、
いや、できないから評論家になっているのだろうけど、そんな他人のふんどしで相撲を取るようなやつらの言葉にいつまでも惑わされてはいけないのである。やつらは常に何かを予測する発言をしている、いっぱい予測してるからその内の一つや二つはあたるのが当たり前だ。まさに下手な鉄砲なんとやら・・・、そんなものウッキーでも日常かましているのだ。そして、『私の言ってた通り円安になりました・・・、土地はいつまでも下がり続けております・・・』など等、ちょっと当たればもうそれこそ鬼の首でも取ったような大騒ぎ、それに乗って"先生、せんせい"と持て囃すマスコミ、アホかお前ら!!!
阪神打線の打率ほどもない予測的中率のくせに当たった当たったと大声でぬかすな!!
今までの予測してたこと全部並べてみろ、馬鹿野郎め!!
それに付け加え、なんとも困った現象であるが、
物事をネガティブに見る、否定的な慎重な発言をより評価する傾向が世の中にある。
ウキ氏のように常にケ・セラ・セラ、楽観的な発言をしていると、
『まったく軽薄、年がら年中小春日和のめでたいやっちゃ』となるのである。
悲観的なことを言ってて景気がよくなるならなんぼでもいうたる、しかし、悲観的に考えていて成功したためしはない、誰でもそんな経験はしているだろう。アカンと思ってたらやっぱり成るものもならないのでは。
堺屋前経企庁長官ではないが、"変化の胎動が見えてきた"とか"上げ潮が徐々に引き潮を上回ってくるような・・・"とか言うプラスのイメージの表現があってしかるべきではないのか。
不思議なことにバブル期の高原景気の折り、慎重な発言はホント少なかった。株はまだまだいく、土地はまだまだ上がる、いったい日本人は言動、思考ともひとつの方向に向くことしかできないのか、そんな風潮に乗って失敗したのが多くの銀行である、その当時の管理職、役員のやつらめ、はよ引退しろ、大バカヤローどもが。

アントワープでは毎朝、経済ニュース専門チャンネルのCNBCを見ているのだけれど、
円相場の動きにしろ東京株式市場にしろ、番組での扱いは非常に大きいのである。ドルに対しての各国通貨動向では円とユーロが常にリアルタイムで報じられている、ニューヨークダウとナスダックの次に出てくるのが日経平均である。
まちがっても中国元や韓国ウオンの動き、ソウルの株式市場の話など出ては来ない。
GDP500兆円、この数字の意味は大変大きい。景気が悪いと言って、マイナス成長だといってこの数字が来年300兆円になりはしない。圧倒的に世界第2位の経済規模なのである。大阪を中心とする関西経済圏だけでもその規模(GDP)は先進7カ国のうち5番目に相当するのである、イギリスとほぼ同じ、イタリア、カナダよりも上なのである。

日本人に今必要なこと、自信そして誇り、楽観的なマインド、
ウキ氏はそう強く思うのである。

3月8日、午前9時関西空港、
寒いやないかいな、
到着前の機長のアナウンスで気温5度と聞き、それは絶対聞き間違いやろと思っていたらホンマでした。
でも、冷え込みはもうこれで終わりのような気がするのであ〜る。
次回は5月半ばを予定しております。
ワールドカップ直前レポート、憎き対戦相手ベルギーの様子を探るのじゃ、
お楽しみに。



◆ Back Number ◆
2005.07 Cut & Polished in Belgium
2005.04 ルフトハンザで出国
2005.02 オリーブの漬物
2004.11 ベルギーの初冬
2004.9 上手なブラフの使い方?
2004.8 2004アジアカップ
2004.4 ゴールデンウィーク に オランダ を想う・・・。
2003.11 Believe me!
2003.7 Vacances!
2003.5 日本とベルギーの規範
2003.3 ベルギー名物と言えば
2002.9 空港のネーミングについて
2002.5 ワールドカップ
2002.3 ひな祭り
2002.2 ユーロとトラブル
2001.12 プリンセス雑感
2001.11 ニューヨークの思い出
2001.9 不景気とは
2001.7 女子テニスプレーヤーというのは宝石だらけで戦っている・・・。
2000.4 ファンシーカットの好みは各国でかなり違うようだ・・・。
2000.2 天然の物が相手になるがゆえのつらさ、というのが常にある。
1999.12 私はダイアモンド業界ではゴルフの世界の尾崎みたいなものだ、といって自己紹介することにしている・・・