◆ ベルギー カラーダイヤモンド買い付けレポート 2001年7月

2001年7月6日、今回の出張もやっとファイナルステージ。金曜の午後5時を過ぎて街は既に週末モード。私も最後の3、4個を適当にあしらって事務所のテレビに見入る。
ウィンブルドンの準々決勝アガシ対地元イギリスのヘンマン。こちらもファイナルセットゲームカウント6-6。3時間にも及ぶ大熱戦も最終局面である。三重の田舎育ちで小さいときから野山をグランドに走り回っていた私としては皇族の方々がなさるようなスポーツは全く縁遠いのであるが、このゲームには素直に感動。勝負どころで見せるアガシの粘り強いプレー、そしてまるで佐々木が投げたフォークボールのようにヘンマンのショットがラインの内側に鋭く曲がり落ちゲーム終了。ゲーム後、勝者ヘンマンのインタビューもよかった。「アガシの方が上だった、私はただラッキーであった。」
”謙なれば益を受く”か。
トッププロの心得かな、とまたまた感動。

ところでゴルフの全米オープンの優勝賞金はウィンブルドンのそれよりも多いとか。テニスファンならずとも納得しがたい。そもそもゴルフとは...。一人の青年にほぼ牛耳られているあの業界は日本では、50半ばの尾崎や青木がいまだにスポーツ紙の見出
しとなる世界である。彼等をプロフェッショナルと呼ぶにやぶさかではないが、あれをプロスポーツと呼べるのかどうか。

プロスポーツ選手とは本来アスリートであることが第1の条件ではないのか。タイガーウッズもNFLやメジャーリーグ、またはNBAへ行くべきアスリードだったはず。仮にイチローがゴルフを選択していたらタイガーウッズに匹敵するような、いやそれ以上のプレーヤーになっていたに違いないし、NFLやNBAの一流プレーヤーにしても同じだろう。彼等がゴルフを選択しないのはスピード、パワー、そしてスリリングなプレーの興奮度が全く比較にならないからだ、てなことを考えながらの出張の総括。私も業界のトッププロ、イチローや佐々木ほどの輝きはないが、ヤクルトの古田くらいのシブサはあるのではないかと思っているのであ〜る。
「謙なれば益を受く、とちゃうんかい」という声がどこからか聞こえてきそうだ。
それにしてもアガシ、あんなすごいプレーを連発して3時間も戦い抜いて、みんなに感動を与えたのにもかかわらず、敗れたがためとはいえ賞金はゴルフの優勝賞金にはるか及ばず、世の中の矛盾を感じるなぁ。きっとグラフも怒っているぞ。

ベルギーの夏はこんなに暑くなかった。

確かいつもスーツを着て歩いていたはず。日本では6月の末にあちらこちらで38度とかいう猛暑。地球の温暖化は深刻だ。ビールやアイスクリームはよく売れるだろうが、この暑さではダイアを買う気も失せるに違いない。身に付けると清涼感の味わえるダイアとか開発できないものかなどと思ってしまうが、ブルーのダイアを見てると涼しげかなという気もしてくる。
実際在庫で持っていたファンシーブルー7つが全て売れた。0.1〜0.2カラットという小粒の物だけど私の販売価格が1つあたり15万から40万という高値である。これは裸石の卸価格なので実際小売店から消費者の手元には安いもので30万円、高い物で100万近い値段になっていることだろう。
こんな高い値段の話をしているとせっかくの清涼感もだいなしだ。世の中いやな事件も多いし結局爽やかなプロスポーツでも観戦するしかないか。
その意味では、またウィンブルドンに戻るが女子の準決勝もよかった。ウィリアムスとダヴィンポートではない。ベルギーのエナンが決勝に勝ち上がったのだ。ベルギー史上初のウィンブルドンファイナリストということでAntwerpの街は大騒ぎ。華奢な体つき、それこそ街路で若い女の子の中に入れば全く紛れ込んでしまうような、どこにでもいるような、それでいて実に爽やかな女の子である。実力が安定すれば日本でも人気が出そうな気がする。ダヴィンポート、ウィリアムス、サンチェス、みんな胸もでかいが体もでかい、女というよりはまぁ、まさにFemaleでんな。I'm missing kimiko Date very much.やがな。

女子テニスプレーヤーというのは宝石だらけで戦っている。ピアス、指輪、ネックレス、フル装備ですな。さすがに鼻にダイア埋め込んでる奴はおらんけど。誰かローレックスしてゲームやっていた。ウィンブルドンのスコアボードの時計がローレックスだからというわけではないだろうけど、あんな重い物よく邪魔にならないものだ。
また、バックハンドの両手打ちの時に左手の指輪のせいでグリップが甘くならないのだろうかとか、ネット際にボールを落とされた時にネックレスのトップが目の前に垂れてきて視界を遮ることはないのかとか、あのでかいピアスじゃあんなに汗かいて痒くなるぞ、とか宝石屋としてはテニス一つ見るにもいろいろ気になってしかたがないのじゃ。
15年位前クリス・エバートというプレーヤーがいた。若い人はしらんやろうね。またおっさんしょうもない話する、と思われるかも知れんけど、彼女が試合中何かを落とした。拾って手首に付け直すのに少し手間取り、その間テレビカメラが彼女の手首をアップでとらえた。ローレックスではありません。あんな重い物...もういいって。
ダイアが一列に並んだブレスレット。彼女の試合の最中から日米の有名宝石店には同じ物がないかという問い合わせが殺到(ちょっとおおげさやな)。もちろんそれは彼女の特注。今日テニスブレスと呼ばれるようになった商品はこのように生まれたのであ〜る。
 エバートさん、実用新案とかブランド登録とかしとけばよかったのにね。
日本ではテニスブレスといえばプラチナを使って白いダイアを並べて、というのが一般的だけど、Antwerpの宝石屋のウィンドーをのぞくとほとんどフレームは金である。それにもちろんWhite系のダイアがメインなのであるが、中にはいろんなファンシーカラーを結構でたらめに並べたのがあったりして、それがまた不思議にきれいに見えている。欧州人独特の感性にまたまた感動。

さてさて、おっさんウィンブルドンばかり見てて仕事したんかいな、といわれそうやけど今回もハードスケジュールの中、睡眠不足の中、暑さで冷たい物を飲みすぎて痛む腹をかかえながらのなか私も必死で戦った。以前は買い付けに来ると現地の業者との戦い(これが普通なんだろうけど)だったが、最近は日本人Buyer同士の戦い(誰が日本での売れ筋の商品を最初に見るかという争い)がメインで何かせちがらいというかやや暗い戦いが多いのが気に掛かる。売れ筋に飛びつくのは仕方のないことなんだけど、後から我も我もと参入してくるのはどうも日本人の悪い癖でんな。文化の相違ということで片付ければそれまでなんだけど、欧州人、特にユダヤ人にはこの感覚は薄いような気がする。他人と違う道を行かないといつまでたっても自分自身の獲物を確保できない、というのが彼等の意識の根底にあってそれが彼等の創造力の源泉になっている。農耕民族である我々は隣を常に意識しながら、である。こんなことは言い尽くされて今更私が蒸し返す問題でもないのだが、AntwerpにはColorDiaのみとか、FancyCut専門とかいう業者があって弊社も創業のおりには彼等を参考にさせてもらっている。
今回のKeywardは「清涼感」
Pinkの次はBlueをヒットさせよう。


◆ Back Number ◆
2005.07 Cut & Polished in Belgium
2005.04 ルフトハンザで出国
2005.02 オリーブの漬物
2004.11 ベルギーの初冬
2004.9 上手なブラフの使い方?
2004.8 2004アジアカップ
2004.4 ゴールデンウィーク に オランダ を想う・・・。
2003.11 Believe me!
2003.7 Vacances!
2003.5 日本とベルギーの規範
2003.3 ベルギー名物と言えば
2002.9 空港のネーミングについて
2002.5 ワールドカップ
2002.3 ひな祭り
2002.2 ユーロとトラブル
2001.12 プリンセス雑感
2001.11 ニューヨークの思い出
2001.9 不景気とは
2001.7 女子テニスプレーヤーというのは宝石だらけで戦っている・・・。
2000.4 ファンシーカットの好みは各国でかなり違うようだ・・・。
2000.2 天然の物が相手になるがゆえのつらさ、というのが常にある。
1999.12 私はダイアモンド業界ではゴルフの世界の尾崎みたいなものだ、といって自己紹介することにしている・・・