古今和歌集ダイヤモンド語訳


いにしえの奈良の都の・・・
いにしえよりの日本人のDNAを感じていたい、
そう思って書き出したFancy Story、
今回は、なんと大胆にも表題のような大がかりなものに挑戦しようと思いついたウッキーであります。
全くとんでもないものが飛び出す可能性もあり、波乱の前途が予想されておりますけども、何卒最後までお読みくださいますよう。

ところで、何故この時期に古今和歌集なのか?
たまたま疲れた目に飛び込んできたのがこれだったということだけかもしれないですが、
ガラにもなく、編集されている“恋歌”を読んでおりますと、その繊細でありながら極めて大胆な表現、妖艶に散りばめられた色彩、現代人に遙かに優る多彩な感性と描写etc・・・もう何をとってもダイヤモンドは太刀打ち出来ないと感じたわけです。平安時代はダイヤなんてなかったけれども、そのかわり鋭い感受性と輝く言葉があった、ダイヤを得た我々末裔は平安時代の感覚を失くしてしまった、そんなように感じますね。

けれども、幸せなことに我々には古今和歌集が残されているのです。
そう、これを賞味することによってもっとカラーダイヤを感じることが出来るのではなかろうか、そのように感じたウッキーなのです。
・ ・・・というところで、
“恋歌”ばかりを集めて『ウキ流・ダイヤモンド語訳』してみました、
どうか存分に味わってくださいませ。


古今集写本 古今集写本


 
  見ずもあらず 見もせぬ人の 恋しくは
            あやなく今日や ながめ暮さむ

貴女の艶やかな美しさ、簾の陰でも分かります。
このままIntenseな想いのみで一日を過ごさせるのですか?

まずは平安時代を代表するプレイボーイ・在原業平の歌から。
流石に助平氏、下簾の隙間からチラリと見えただけの女性にもアイコンタクト、早々にこのような歌を贈って夜這いの段取りか?



 
  知る知らぬ なにかあやなく わきて言わん
          思ひのみこそ しるべなりけれ

私はIntenseでもVividでもございません、
ひょっとしたらVery Light。
でも大事なのはBrilliance、貴方は本当にそれがお解りでしょうか。

業平の歌に対しての返しです。
この返事では、助平氏『やったあ!』とはゆかなかったようで・・・。



    
  恋せじと 御手洗川に せし禊ぎ
        神はうけずぞ なりにけらしも

恋もダイヤも封印します。神に誓います。禊でもなんでもして必ず誓いを守ります。
でも、Fancyなダイヤと突然の恋はやめられないかも。

川に浸かって禊までしても止められないのは神様がそれを聞いてくださらなかったから、というようなメチャクチャ勝手な解釈も可能な平安時代です。
何でもありの良い時代やねえ!




  忍ぶれば くるしきものを ひとしれず
          思ふてふこと 誰に語らむ

忍ばず、忍び、忍ぶ時・・・、
忍ぶ恋の5段階。
faint, light・・・Fancy Vivid、カラーダイヤのように色を出せたら。

現代から見るに、自由奔放な平安時代の恋愛。チラリと見ただけでも文(ふみ)や歌を贈るような積極果敢なイケイケ集団。一体何を‘忍んで’いたのか解りかねますけども、ひょっとしたら彼らは忍ぶ恋に憧れていたのかもしれませんね。



 小野小町




  人を思ふ 心は我に あらねばや
        身のまどふだに 知られざるらむ

心傷つく深い恋、我を忘れる深い濃い。
色濃いDeepは好きだけど、Lightな恋をしてみたい。

赤く燃えてしまうと私が私でなくなってしまう。
コントロールの効かない自分ほどやっかいなものはないですね。
それよりも淡くLightなものが良いようで。




  思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ
         夢と知りせば 覚めざらましを

夢の中のColorダイヤ、やはり夢の中だけのもの。
覚めずにいつもFancyな世界にふたり、浸っていたい。

小野小町さんの歌でございますが、この時の彼女は夢の中の架空の男に恋しているのかもしれませんね。
ベッピンさんにはそれなりの悩みがあるようで。




  いとせめて 恋しきときは うばたまの
            夜の衣を 返してぞ着る

切なくて、切なくて眠れぬ今宵の胸のうち、
静めてくれぬかブルーのダイヤ。

これも小町さん。やっと現実の世界で理想の男に出会えたか?
夜着を裏返して寝たら恋の相手が夢に現れると信じられていたそうですけども、
夜着に頼る、夢に頼る、ダイヤに頼る・・・、何に頼っても恋の病は治りません。
それでもまだ、ダイヤが一番効き目ありそう!?




  君恋ふる 涙しなくは 唐衣
         胸のあたりは 色もえなまし

紅に燃えるFancy Red、人を想うFancy Color。
貴女を思うこの心、私の愛はピュアでクリアな無色透明。

紀貫之らしい高い技巧と評価されております。
恋の涙を流しすぎ、胸の炎を消してしまうほどだということですけども、
火を消すほど泣いてどうする、オッサン!




  越えぬ間は 吉野の山の 桜花
        人づてにのみ 聞きわたるかな

貴女の美しさはFancy Light Pink、吉野の桜のようだと人は言います。
まだ会ったことないのに、まだ見ぬうちから淡い恋心を抱いてしまいました。

これも紀貫之です。
桜の花に譬えられる女性の美しさとは?
楚々とした可憐さ、なのでしょうか。
細面で切れ長の目、形の良い小さな唇・・・かな??



 紀貫之





  起きもせず 寝もせずで 夜をあかしては
          春のものとて ながめ暮らしつ

いざゆかん、ふたりで味わう恍惚の調べ。
貴女の手をとった昨夜のできごと。
叶わず今朝はひとりボンヤリと、Light Blue、涙の春雨。

在原業平。
首尾良く女性の寝所に侵入できた助平氏でしたが、一晩かけて口説いたにもかかわらず、結局何もできずにスゴスゴ退散。ちょっと露骨過ぎたのやねえ、ザマア見やがれ!
しかしまあ、彼の徹底したEpicurean(快楽主義者)ぶりはホント見事なものです。




  みるめなき わが身をうらと 知らねばや
           離れなで海人の 足たゆく来る

受けて立ちます、百夜通い。
毎夜、異なるカラーダイヤ持ってきて。
けれどもたった100日で、私の心は変えられない。

小野小町の歌。
しかしねえ、100種もカラーダイヤ集まるかな? 
あのなあ・・・、
小町が男にカラーダイヤを強要したというStoryには同意いたしかねますけども、
小町を小町とする所以は、“深草少将の百夜通い”でございますな。『毎日通ってきたら考えてあげてもいいけど・・・』という小町のあやふやな言葉だけを頼りに、病を押して小町のところへ通い続け、100日目ついに息絶えたという深草少将の悲恋のお話。そこまでするかー、
近くの賃貸マンションにでも越してきて通ったら良かったのに・・と考えるのはウッキーだけでしょうか?
えっ、そんなもんなかった?!




  有明けの つれなく見えし 別れより
           暁ばかり 憂きものはなし

別れ惜しみ、ふたりで見た有明けの月。
Twilightに輝く貴女の素肌と胸のダイヤ、
忘れがたい思い出です。

壬生忠岑。
藤原定家に“妖艶”と評され、古今和歌集の中でも一流と言われる歌ですね。百人一首にも選ばれております。
最初に読んだ時は、なかなか情景が見えてこなかったのですけども、ダイヤをどこに持ってきたら良く似合いそうかと想像した瞬間に忠岑と女性との距離が理解できました。忠岑さん、このあと振られたのですね、彼女の胸のダイヤは今?
ダイヤモンドだけは永遠の輝き!



 逢坂の関



  こりずまに またもなき名は 立ちぬべし
            人にくからぬ 世にし住まえば

後悔しても遅うございます。
人に知られて何を恥じることがありましょうや。
美しいダイヤモンドに惹かれること、
貴方と恋に落ちること、
それらがこの世の宿命ならば。

これまで密かに会ってきて及び腰の男(在原元方)へ、相手の女性から歌でのきつ〜い督促?でしょうか。
しかしまあ、元方クンもね、えらい女に言い寄ったもんやな。
この調子ではトコトンつきまとわれ放してもらえまへんでえ、
お〜カワイソウ、あ〜オモロイ。




  しののめの ほがらほがらと 明けゆけば 
          おのがきぬぎぬ なるぞかなしき

明るくなった東の空、
急かされるような別れの支度。
忘れてはいけない、このピアス。

一夜をともにした翌朝の男女を後朝と書いて『きぬぎぬ』と言いますけども、朝になってお互い着物(衣)を着なくてはならない、というのが語源らしいですな。きぬぎぬと言うからにはやはり絹(きぬ)の衣(きぬ)なのでしょうか、
絹には何となくプラチナのジュエリーが映えそうですけども・・・、
恋人と愛し合った場所にジュエリーを忘れる女性の多いこと多いこと。
どうかお気をつけて、後朝は後々の後悔なきように!




  寝ぬる夜の 夢をはかなみ まどろめば 
           いやはかなにも なりまさるかな

Brownish? いえOrangish? 、はたまたPurplish?
儚くて、肌の色さえ思い出せない昨夜の逢瀬。
今夜の夢で再現できたら。

在原業平。
情感タップリで趣きある歌という印象なのですけども、
どうしてそんなに逢瀬が儚いのかちょっと疑問に思いますね、儚いと言うからには時間がとても短かったということでありましょう。そう考えると、助平氏、やはり他にも逢瀬の予定があった? 女のことしか考えてない助平やからね、この夜もダブルヘッダーか?! 
ほんまムカつく野郎じゃ!!




  かきくらす 心の闇に まどひにき
          夢うつつとは 世人さだめよ

ダイヤのような色艶に、理性なくした昨夜の出来ごと。
あの美しさは現実なのか夢なのか、私には全くわからない。

ムカつきついでに在原業平をもうひとつ。
ホンマに毎度毎度ムカつくけども、
これはひょっとしたら助平氏、痛恨の一打だったのかも?!
えらい女と・・ってしもた・・・という助平悔恨の歌なのかもしれまへん。



      

  限りなき 思ひのままに 夜もこむ
          夢路をさへに 人はとがめじ

私の夢先案内はオレンジッシュなYellowダイヤ、
燈火のようなこの色で夢路を通って貴方のもとへ。

平安時代はホント色々勝手な解釈を楽しんでいたようですけども、
そのひとつが、恋の相手が自分のことを思ってくれているから相手の夢を見る、というもの。その夢路をたどってゆけば愛し合えるに違いない、そういう意味なんでしょうね。
逢瀬のない夜も夢の中で♂♀・・・ひとり眠る時くらいゆっくりしたらどうですかね。




  陸奥(みちのく)の 安積の沼の 花がつみ
             かつ見る人に 恋ひやわたらむ

たまにしか会えぬがゆえの恋しさなのか愛なのか。
野の花であるがゆえの可憐、Fancy Gray Violetの美しさ。

“花がつみ”とは野性の花菖蒲であろうということ。
Violet系の美しさ・・・・、
口数の少ない静かな小柄なベッピンさんを想像しますね。
『私のことかしら』と言うてるのが聞こえてきたけど、アンタはほど遠いな。




  春霞 たなびく山の さくら花
        見れども飽かぬ 君にもあるかな

華やかな色艶ばかりが花じゃない。
いつまでも見ていたいのは淡い色、
Fancy PinkかFancy Light、
春の香りがついてそうです。

流石に、春の情景を歌わせたら屈指の達人、紀友則さんですね。
美しさが目に沁みるような歌ですけども、恋歌としてはちょっと深さが足りない?!




  いで人は 言のみぞよき 月草の
         うつし心は 色ことにして

人の言葉はtreated、染めたダイヤのようなもの。
誰か私にnatural color、本当の心を贈ってください。

月草とは今の露草だそうですが、その花で染めた藍色はすぐに剥げ落ちたとか。
トリートブルーも直ぐに脱色したら面白いのにねえ。



 逢坂の関





  頼めこめし 言の葉いまは 返してむ
           わが身ふるれば 置き所なし

カラーダイヤも、お手紙も、貴方様のお気持ちたくさん頂戴しました。
置き場所のない気持ちとお手紙だけはお返しします。

高貴な家系の娘で、宮廷の女官であった藤原因香(よるか)さんの歌。
藤原紀香の親戚みたいな名前ですけども、ベッピンさんだったのでしょうね。
その因香さん、恋人であった右大臣・源能有が訪ねてこなくなって盛りを過ぎたと自覚したのでしょうか? それとも若いツバメ(古〜い表現で申しわけない・・・)が出来たのか?
ちょっと判断に迷う格調の高い歌でございますな。




  色見えで 移ろふものは 世の中の
          人の心の 花にぞありける

心の色は変わりやすいけれども、
Natural Color のダイヤモンドだけはいつまでも同じ色でいてくれる。
そんなことに今頃やっと気がつくなんて。

そうなんです、天然のカラーダイヤだけは永遠に同じ色、人を裏切りませんよ。
人を信じるな、カラーダイヤを信じなさ〜い!




・ ・ ・

いかがでございましたでしょうか、
多少なりともご自身のことと重ね合わせてお感じになっていただけましたら幸にございます。そうでない時は、ヒマ人ウッキーと大いにご嘲笑くださいませ。

まだまだ浅い読み方のウッキーではございますけども、一応この古今和歌集の恋歌、360首全てに目を通しまして、あれこれと思いを巡らせました。まず言えるのは、
真剣に考えるとホンマやっとれんわ!!
ということですね。
平安貴族というのは、平和なのは誠に結構ですけども、毎日毎日トコトン恋愛のことばっかり考えて遊び暮しているような奴らですからね、どこまでが真剣でどこからがゲームなのかまるで判断がつかない、ゲームであるにしろ真剣にならないと勝てないでしょうから忍んだり涙流したり(の振りをしている)、そんなことホンマ心の底から思ってやってたのかどうかね、読み通すと全く疑問に思えてくる。

しかしね、ダイヤモンド語訳なんて言ったものですから、なんとかして平安貴族にダイヤを着けさせなくてはならないし、ダイヤを意識させないといけない、そういう制約の中であれこれと恋愛の情景を想像しておりますと、彼らは流石に平安貴族、世の中のきらびやかなものとか、お洒落と言われるものは全て似合いそうなんですね。そして、ダイヤモンドなんて着けているのが至極当然のように思えてくる不思議さ。これにはウッキーも驚いてしまいました。

歌を読んでいるだけで色んなことが分かってくる楽しさというのもありました。在原業平のプレイボーイぶりなんてね、今日びの芸能人の恋愛が幼稚園児の“ままごと”に思えてくるほどですし、小野小町のイメージが覆されるようなメンタルの奔放さ、あるいは、紀貫之の歌の才能を鼻にかけた様な“いけすかぬさ”等など、歌とダイヤを通して時代を飛び越える楽しさですね、そういうことがホンマのFancyなのだろう、
かように感じた今回の、
『古今和歌集ダイヤモンド語訳』でございました。




◆ Back Number ◆
第20話 UKIカラーで綴った枕草子
第19話 古今和歌集ダイヤモンド語訳
第18話 2006W杯 × Fancy Color
第17話 That's Baseball
第16話 トリノの余韻
第15話 “The Aurora butterfly of Pease”
第14話 Fancy June ...
第13話 ウッキー夜話
第12話 『春のダイヤ人気番付』
第11話 2003年 南船場の秋
第10話 「白シャツ」と「白ダイヤ」にご注意。
第9話 初詣
第8話
第7話 日本の色
第6話 オリンピック随想
第5話 お正月に想う
第4話 ブルーダイヤ、高価とは聞いておられるでしょうがどれほど高価なのか・・・
第3話 同じ赤でもピンクダイアとルビーではかなり色に違いがあります・・・
第2話 新しい「誕生ダイアモンド」なるものを設定・・・!!
第1話 『fantasy』で『fantastic』な『fancy world』へ御案内。