◇◆  ファンシー ストーリー第9話  ◆◇


初夢、と書いて『バカ売れ』と読む、
もちろんバカが商売するのではありません、もう面白いようにダイヤが売れる、
0.1crtのLightPinkが20万円くらいで売れる、
0.2crtのFancyYellowが100万円、う〜ん、これはたまらん、あっという間に蔵ならぬビルが建つ、いやいやそれよりも、
イメージ
三重の実家の裏山からダイヤの原石が出てきて・・、絶対一人で採掘するぞ、人に知られんようにね、そしたら原価は0や、売れたら売れただけワシの儲け、オオッこれでウッキーコンツエルンの誕生や、
失礼しました、ホンマ正月ボケもええとこでんな、
でもこんなことでも夢想しないとね、新年くらいパーッと明るく行きましょう。

イメージ  2003年がやって来ました。
ウッキーのようにアホな夢見ている人は少ないでしょうが、皆さんもいろいろと思うところのあった年末年始をお過ごしになられたことでしょう。現実を見るとどうしても暗くなる、明るい話題が欲しいですね、でも新聞や週刊誌を読んでいると明るいと言うには程遠い、そんなわけでテレビ、日頃あほばっかり出とるな
あとバカにしていてもこんな折には適任やねえ、ニュースとスポーツ以外ほとんどテレビを見ないウキ氏も年末年始はよくテレビを見ました。紅白は最初から最後まで4時間余り完投?完走?ワシが歌ったわけやないですなあ、とにかくほぼ全部見ました。いつもながらではありますが、歌のインターバルでの寒―――いジョーク、失笑を禁じえないどころか失禁しそうになりましたが、
いったいどうやったらあんな笑えないネタを考えられるのかNHKに聞いてみようと考えつつ、ウッキーがシナリオ書いたろかと真剣に思いながら、いやいやそれでもウキ氏にとって年に1度の歌謡番組、見ていると非常に興味深い、オオッこんなやつもおったんやなと感心する事しきり、SMAPの中居みたいな司会だけさしてもろとけ、みたいな奴もおりますが、今日びの若い人たちはホントにルックスもいいし歌も上手、我々の若い頃とはえらい違いです、私は○△トリオの同級生なんですけども、ホンマ言うのも恥ずかしや、やつらは今だったらドサ廻りもでけへんね、二十数年前は聞いてるだけでハラハラしましたなあ、山口さんに桜田さん。まあでもあの歌下手ブサイク三人娘にも華はありました。ところが最近の紅白、いつまでも賞味期限切れのやつらが出ているには閉口しますなあ、
与作も引退したよ北島さん、オバハンも天城越えするのか石川さん、清水アキラの方が歌上手いよ五木さん・・・、最後のほうで急激に熱気が冷めるのがこのところの特徴なんですねえ。紅白歌合戦の勝敗なんてどうでもいいですが、結局、旬の歌手(歌)が多かった赤組の勝ちということでしょうね。

なんのかのと言われながらも莫大な予算をかけての平成絵巻物、色彩豊かで実に華やか、
このルーツは千年以上も前、平安時代にあると皆さんはお気付きか?
歌合せ(うたあわせ)、
もちろん歌謡曲を伴奏付きで歌うのではなく、和歌の優劣を競うものでしたが、
資料を読んでおりますと、歌合せの舞台装置というのでしょうか、会場の飾りつけはなんとも雅やかでファンシー、実際に見たら表現に困るのではないかと思われます。それもそのはず、帝(みかど、天皇)自ら音頭をとっての一大イベントだったそうですから。
中央を帝の御座として椅子を置き、左右に分かれたそれぞれの側に入り江、渚を模した洲浜が作られたのですが、その台の下に敷かれたのが綺(あやぎぬ)― 入りくんだ模様を織り出した絹織物 − なんです、あやぎぬというのは見ての通り綺麗の綺の字、まさに美しくて華やかそのものですね。敷物がこれ イメージ
ですからね、洲浜の飾りつけはため息が出そう、銀の鶴を立て、それに金で出来た花を咲かせた山吹の枝を咥えさせたりとか、題が恋の歌となると、かがり火を点けた鵜舟に歌を書いた色紙を載せるというような趣向を凝らしたようですね。派手さばかりではなく幽玄も感じさせてくれます。参加者の衣装も凝っておりますね、例えば、左方が桜の花びらを重ねたような模様の着物の裾に赤紫の刺繍をあしらったような衣装とすれば、右方は青系の衣装で対抗するという具合です。かたやFancy Pink、こなたFancy Blue、その様な感じに思えまして、想像するだけで楽しいですね。とにかく、当時手に入る最高の材料に工芸の粋を尽くした上に日本の美をふんだんに取り入れてある、その様な舞台装置であろうことが推察されます。
この歌合せ、現代の紅白と違ってホンマの真剣勝負、これに全精力をつぎ込んだ方もたくさんいたとのことです。なんせ帝の御前ですからね、名誉がかかるし、ここで有名になったら確実に世に出られる、そんな具合ですからここでの敗戦で悲劇も起こっております。

壬生忠見(みぶのただみ)、
『恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
            人しれずこそ 思いそめしか』
平兼盛(たいらのかねもり)、
『しのぶれど 色にでにけり わが恋は
             物や思うと 人のとふまで』

これら二つの歌は、960年の内裏歌合せの結びを飾るものとして合わされました。
う〜ん、素晴らしい、紅白のトリとはえらい違いやね・・・。
勝負はすったもんだの結果、兼盛の勝ちとなりましたが、後世の評論家のほとんどが忠見の歌の方が優れていると判断しているくらいですから忠見の落胆はいかばかりだったのか、敗戦のあと食事が喉を通らなくなり、ついに衰弱死してしまったそうです。
確かに、自分の気持ちをストレートに解り易く詠んでいる兼盛の歌もいいですが、忠見の歌の方が趣がある、恐らく、内裏の女性の心情が歌のモチーフと推測されますが、『人しれずこそ 思いそめしか』という言葉の使い方に、恋をしているという主人公、柳腰の色白美人を想像してしまうのは私ばかりではありますまい。
しかし、そこまで思いつめなくとも、とは誰もが考える・・。
忠見がそこまで悔しがったのは彼の歌がオリジナリティー溢れているのに対して、兼盛のものは万葉集に似たよう歌があったからなんです。審判役の貴族は残念ながらそれを知らなかった、両方とも白眉の出来、優劣をつけるのは勘弁願いたいと判定を下すことが出来ず、困惑しきったあげくに帝のコメントを聞こうとした、帝は小さな声で、『しのぶれど・・・』と口ずさんだそうです。そんな情況で下されたジャッジですから口惜しさも倍増というのはなんとなく理解できる。現代に当てはめてみれば、氷点下で自分のオリジナルを歌った中島みゆきが、ぬくぬくと暖炉の前で『古時計』を歌った平井堅よりも劣っていると言われたら、やっぱり落ちこむやろね、「・・・涙もかれ果てて、もう二度と笑顔には・・・」となっても中島さんは「そんな時代もあったねと・・」と、衰弱することなどないと思いますが。
歌合せも村上天皇が主催したこの960年のものをピークとして徐々に簡素になってゆき、平家の勃興や鎌倉幕府の誕生など武門の興隆とともにほとんど忘れられたものとなっていったようです。してみると、のんびりと平成大絵巻を見れるのも世の中ホンマに平和なんやと実感しますなあ、紅白もこれからピークを迎えるのか?ぜひとも次回からは両陛下の臨席を仰ぎ、皇太子始め皇族方に審査員になってもらって真剣勝負にしたらどうでしょうかね、勝った方には賞金総額10億円とか、MVPには1億円とかね、そしたらもっと見ごたえあるものになるのでは。

イメージ さて、初夢よりも現実的になるのが初詣ではないかと思いますが、
1ヵ所だけではなく複数の寺社にお参りした方も多いことでしょう、ウキ氏は三重賢人、いや失礼三重県人ですからね、初詣は当然ながら伊勢神宮、と言いたいところですが、もう20年くらい行っておりません、あの混雑がいやでね、 やはり明鏡止水の気持ちで初詣したい、幸運な事に伊勢神宮の別宮である滝原神宮というのが割りと実家の近くなのですが、なかなか由緒があって静かなところ、 ウッキーの好みにピッタリなんです。伊勢神宮を建設する前にまずここに仮のお宿を設えたということで、鳥居から神殿までうっそうとした林が
数百メートルにわたり続いているのがとにかく神秘的、よそでは味わえない気持ちになることができます。そんな中で、今年こそバカ売れや、とか、裏山からダイヤが・・なんて祈るアホはおりませんね。ウキ氏でさえも人並みに家内安全をお祈りいたしました。
こんなことを書き始めて何を言いたいのか?
元旦の初詣で感じる『澄みきった心もち』、テリの素晴らしいダイヤを見たときに感じるものと共通点があります。ところが、この我々日本人が普通に使っている『テリ』という言葉、海外ではなかなか相当する単語がない、英語の辞書を引いてみると、真珠のつやを表現するものとして、"the luster of pearls"というような例文があるけども、このlusterがダイヤに当てはまるのかと言うと何となく違うような気がするし、ダイヤモンドをちりばめたような夜空を表す"the glory of a starry night"のgloryではあまりにも壮大すぎて、光り輝くものでも「神の栄光」の方でしょうね。また、GIA基準におけるグレーディングでテリの記述は全くと言ってもいいほどありませんし、日本語が多少出来るユダヤ人やインド人がそのまま『テリ』と言っていますから他のどんな言語よりも『テリ』という日本語がテリにピッタリしているのではないかと思われます。理論上は『D VVS1 Excellent』のテリの悪いダイヤが売りに出される事もある、まあこれまで見たことないですが。それでも海外ではテリの良い物と悪い物とでは圧倒的に値段が違っております。日本でもかつてはそうでした、しかし、最近の日本ではそうじゃなくなってきている、同じSI2やI1でもテリの良い方を選択していたのはもう過去の話、現在はできるだけキズの見えにくい物を、と事あるごとに卸の顧客に言われる、ウキ氏はこれが大きな不満であります。明らかに、同グレードでもテリの良いものの方が海外での買値が高いのに、キズが目立つと拒否される、SI2やI1でキズが目立つのはテリ石の証拠であるのに。拒否されるだけならまだしも、その代わりに、キズの目立ちにくいテリの悪い物を求められ、結構な値段で売買されている、このような現状は何とか是正しないといけませんね。4Cの鑑定書にテリの項目を新たに加えたものを作るべき、と鑑定屋に働き掛けていかねばと考えております。どんな英単語を当てはめてどんなグレード用語を使えばよいのか、皆さん良い知恵あったらぜひとも教えてください。
というように元旦の朝、神の栄光の前でテリについて思い巡らせたウッキーであったのでした。
1月12日には奈良と京都で伝統の年中行事が行われましたね。ニュースで見た人も多かったことと思いますが、若草山の山焼きと三十三間堂の通し矢です。
私も残念ながら生で見たことないのですが、これらくらいFANCYな伝統行事はそうそうないと思います。まさに新年を飾るに相応しい。
イメージ

興福寺の五重塔の黒影をくっきりと浮かび上がらせながら若草山の炎に空を紅く燃やす、紅蓮というのは書いて字の如く真っ赤な蓮の花のことですが、実際見た人は余りおりますまい、恐らくはこの山焼きの色が紅蓮の炎、すぐそばで見たならきっと新年のモチベーションが高まったのではと感じますなあ。
一方、通し矢は実にカラフルで華やか、もちろんそんなシーンばかりマスコミは集めているわけですが、新成人の女性が色とりどりの振袖に袴を着けて矢を射る姿は、彼女たちが楚々とした時とはまた違った艶やかさに溢れておりますね。約60m離れた直径1mの的を狙うのだそうですが、『的がダイヤに見えなかった?』とか聞いたらホンマに射られてしまうやろね。あの澄んだ眼差し、実に魅力的でございました。でもやはり彼女たちに聞いてみたいですね、何を考えて矢を射たか。
「Brilliantなもの」とかお答えいただきましたならその場でダイヤをプレゼントなんですが。



◆ Back Number ◆
第20話 UKIカラーで綴った枕草子
第19話 古今和歌集ダイヤモンド語訳
第18話 2006W杯 × Fancy Color
第17話 That's Baseball
第16話 トリノの余韻
第15話 “The Aurora butterfly of Pease”
第14話 Fancy June ...
第13話 ウッキー夜話
第12話 『春のダイヤ人気番付』
第11話 2003年 南船場の秋
第10話 「白シャツ」と「白ダイヤ」にご注意。
第9話 初詣
第8話
第7話 日本の色
第6話 オリンピック随想
第5話 お正月に想う
第4話 ブルーダイヤ、高価とは聞いておられるでしょうがどれほど高価なのか・・・
第3話 同じ赤でもピンクダイアとルビーではかなり色に違いがあります・・・
第2話 新しい「誕生ダイアモンド」なるものを設定・・・!!
第1話 『fantasy』で『fantastic』な『fancy world』へ御案内。