◇◆ ファンシー ストーリー第3話 ◆◇ |
今年はピンクが流行色と言うことで、デパートではスカーフ、靴、かさ、下着、他なんでもピンクのものをそろえておけば知らぬ間に売れているということです。ダイアモンドもあやかりたいですな。 宝飾類でピンクのダイアに競合するとすれば、やはりルビーですね。 20年程前、寺尾聡が「ルビーの指輪」という歌で大ヒットを飛ばし、レコード大賞を受賞しました。この寺尾氏「雨あがる」で好演しているように 演技派でもありますけれども貧乏学生のような小汚いなりで、似合わないサングラスをかけて歌っていた姿は映画の貧乏武士そのままという感じでしたね。 西暦2000年の今であれば、あの格好と声は歌手としてあまり受けないでしょう。 それはともかく、 おかげで婚約指輪にルビーがバカ売れしたそうです。当時、大学生だった私には全く関係のない話しでしたが、、、。日本ジュエリー協会は寺尾氏にお礼として特大サイズのルビーをプレゼントしたそうです。寺尾さん、あのルビーどうしたのかな。 |
同じ赤でもピンクのダイアとルビーではかなり色に違いがあります。 イメージとして、熱情、仁愛、威厳というような言葉が添えられているように、ルビーは真っ赤な血の色がいわゆる’本筋’なのでしょう。 ダイアモンドにもルビーのような赤が存在しますが、そこそこの大きさの物となると国際的なオークションでしか見ることができません。 我々が関わることのできる範囲の物はせいぜい桃の花か桜の花びらのような色の物です。この<ルビー>と<ピンクのダイア>の色の違いを感覚でとらえるとしたらどうなるのでしょうか。 短歌で表してみましょう。 |
「柔肌の熱き血潮に触れもみで、寂しからずや道を説くきみ - 与謝野晶子」 俵万智さんはこれをどのように現代語訳したのか知りませんが、 Cosmic流にジュエリー語訳すると 、 「私は身も心もルビーのように赤く燃えているのに、あなたは訳のわからないことばかりしゃべっているのですね」と、なります。 「ひさかたの光のどけき春の日に、しず心なく花の散るらむ - 紀友則」 春の陽光の中、桜の花びらが散っていく日本美の極みが詠まれています。 情熱のルビー、洗練されたダイア、あなたはどちらを選択しますか? |
消費者の皆さんには、どうして標準的なダイアにはエメラルドやルビーやサファイアのようなはっきりとした色調の物がないのか、という素直な疑問があると思います。 ひとつには、ダイアが他の宝石に比べて透明度が高い、ということがあげられます。 透明度とは4Cの’Clarity’のことで、内部のキズと反射屈折率のことですね。 スタンダードなダイアは他の宝石よりも、圧倒的に内部のキズが少なく、反射屈折率が高いのです。ですから当然ダイアのほうがよく耀きます。よく耀くということは光の色に近くなっていくわけですから、透明度が高くなり、色が抜けるというわけです。 もうひとつは、他の宝石はエメラルドにしろルビーにしろ、天然であるには違いないのですが、消費者の目にとまる時にはすでに何らかの処理により着色されている、ということです。99%以上の物がそうです。天然であの色が出ているのはごく一部なのです。 ところがそれをはっきりと説明して販売している小売店があるでしょうか。 |
; | 一方、ダイアはアメリカのGIAにより基準が厳しく定められ、4Cというグレードをもって品質管理しています
。カラーダイアも例外ではありません。 ひところ、放射線処理によりブルーやピンクに色づけされたダイアが小さなブームを呼んだことがありました。それらのものは当然と言えば当然ですが、天然色を圧倒する派手な色調です。しかし、ダイアの場合、鑑定の段階においてそれら処理石は簡単に識別され、鑑定書の カラーグレード欄には’処理石’とはっきり記述されるのです。ですから、ダイアモンドの場合、鑑定書に’PINK’と記載されていれば本当の天然色というわけです。 まやかしの情熱よりも、気品ある洗練された世界、それがダイアモンドです。 |
さて、今回このお話に登場していただいた紀友則氏、今から1100年も前の人です。 いまさらながら日本文化の奥行きの深さを感じますが、ご本人は今頃「だいあもんどのあきんどがわらわの名を使うておるとは、、、」と、苦笑しているに違いありません。なぜなら、この方、古今和歌集の選者として名を残し、自ら四十六首も歌集に載せていながら色恋の歌には全く淡白なようすです。歌を詠んでいなければ、女のところに通っていた平安貴族としてはまことに珍種。しかし数少ない彼の恋の歌の中に、 「春霞たなびく山のさくら花見れども飽きぬ君にもあるかな」 と、桜の美しさに女性がたとえられているものがあります。 さすがですね。 やはり日本女性は桜の花びらのような気品のある存在でないとね。 |
◆ Back Number ◆ | |
第20話 | UKIカラーで綴った枕草子 |
第19話 | 古今和歌集ダイヤモンド語訳 |
第18話 | 2006W杯 × Fancy Color |
第17話 | That's Baseball |
第16話 | トリノの余韻 |
第15話 | “The Aurora butterfly of Pease” |
第14話 | Fancy June ... |
第13話 | ウッキー夜話 |
第12話 | 『春のダイヤ人気番付』 |
第11話 | 2003年 南船場の秋 |
第10話 | 「白シャツ」と「白ダイヤ」にご注意。 |
第9話 | 初詣 |
第8話 | 秋 |
第7話 | 日本の色 |
第6話 | オリンピック随想 |
第5話 | お正月に想う |
第4話 | ブルーダイヤ、高価とは聞いておられるでしょうがどれほど高価なのか・・・ |
第3話 | 同じ赤でもピンクダイアとルビーではかなり色に違いがあります・・・ |
第2話 | 新しい「誕生ダイアモンド」なるものを設定・・・!! |
第1話 | 『fantasy』で『fantastic』な『fancy world』へ御案内。 |